花彩便りVol.12 十勝岳は男?女?~壮大な神代の夫婦ゲンカ~

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 富良野盆地と十勝岳連峰の山並みは、すっかり富良野を象徴する景観となりました。そのため、十勝岳、十勝連峰を「富良野盆地を代表する山なのだから、富良野山(ふらのさん)あるいは、富良野連峰と呼ぶべきだ」と言う説さえ現れてきました。

十勝岳は旅人のランドマーク

 山の名称は形状や川の源流を表したり、歴史的な伝承によって伝えられてきたものです。昔、アイヌの人たちにとっては十勝岳は十勝の国への目印で、富良野盆地の東側の高台(旭中、本幸地区)を通り、原始ヶ原の峠を越えて十勝川の上流に至るのが順路でした。十勝岳は旅人のランドマークであり、古代から伝説と伝承の舞台だったのです。

十勝岳と雌阿寒岳は夫婦?

 アイヌ伝説の世界は壮大です。神代、十勝岳は男神で、当時は雌阿寒岳(めあかんだけ)という女神と仲むつまじい夫婦であったそうです。
 ある日、ささいなことから夫婦間に不和が起き、雌阿寒岳は遠くへ逃れていくことになりました。その薄情さに腹を立てた十勝岳は、かたわらの大やりを投げつけたところ、見事命中。音更山(おとふけやま)(大雪山系)が仲裁に入ったのですが間に合わず、傷ついた雌阿寒岳は血を流しながら釧路の国へ去っていき、傷あとから出た膿が硫黄になったそうです。
 このようにアイヌ語地名には土地の形状を表すばかりでなく、こうした伝承とセットになっているものが多くあります。その昔富良野盆地に宿したアイヌの家族が、暮れていく十勝岳を眺めながら、子どもたちに語り伝えたのでしょうか。折しも、古代版「北の国から」のようでもあります。

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